「学がある女はもっと好きだ。…いくら出せば、おまえはこちらへ来る?」


「…ふふ。金ではありんせんよ」


「ほう。では……愛とでも言うのか?」



驚いた。

こんな男にも“愛”などという言葉が出るのだと。


ここに愛はありんせん。

愛が芽生える場所は、心なのでありんすから。



「なら聞こう。おまえには心に想う男がいると?」



ふと、男はそんなことを聞いてくる。


すこし前、裏吉原から身請けされた郎子の話を聞いた。

相手側は財力と地位を持っている女性だそうで、それと同時に買われた緋古那という名の太夫が心から愛した女なのだと。


手紙には「新しい同居人が増えて部屋も布団も狭い」と、楽しそうに綴ってあった。


私は涙が止まらなかった。

こんな場所でも幸福を掴めてしまった嬉しさと、喜び。


それからどうしようもない悔しさで。