須磨side




「須磨、おまえに指名が入ったよ」


「…あちきはお受けしんせんと、伝えておくんなんし」



これで大体が通る。

そのためにあちきは花魁になりんしたのだから。


………そうだろう、水月。



「なにを言っているんだい。今日だけは駄目よ」


「…何故そのようなことを」


「……今日の客は徳川からの使者の方なの。さすがにあんたでも、断るわけにはいかないのよ」



徳川から……?

読みやすいとは言えない字が綴られた手紙からそっと目を離し、世話役に移した。



「いきなりあちきを呼び出すだなんて、礼儀がなってござりんせんよ」


「だとしても…将軍家の使いよ。そんなこと言ってられないわ」



金さえあればどんなことでもできる、とでも言いたいのか。

せっかく最愛の弟から届いた文を読み返していたというのに、気分は憂鬱になるばかりだ。