「わかんないよウル…っ、俺っ、なんで、なんで……!」
腕を引っ張って、裸足のまま。
所持品は着ている着物ただひとつ。
私たちは吉原を抜け出して、月の光だけが照らす道を進んでいく。
だれも追ってこない。
籠から脱出した片羽の蝶を追いかける者は、もう誰も。
「ねえっ、ウル、お願いだから止まって…!」
土って意外と柔らかいでしょう?
ひんやり冷たくて、石は小さいほうが案外踏むと痛かったりするんです。
木の匂いって、どこか身体が痒くなってくる匂いがしませんか?
「羽留姫、さま…っ、まったくわかんないんだって……!」
あの日もこんな夜だった。
夜に消えてしまいそうだった私を、あなたは見つけてくれたの。
『腹を空かせているのかい』
『俺は不器用だから、きれいに真っ二つできるか分からないんだけど』
『お、きれいに割れた。ほら食いな』