「緋古那…!!あなたを太夫にまでしたのはあたしでしょう…っ!?あたしを裏切る気?今までどれだけのお金と時間をあなたに費やしてつぎ込んだと思っているの!?」


「…わかっているよ。風見姫には感謝してるさ」


「だったらあたしじゃないの…ッ!!こんな子供に必死になって、ああ馬鹿みたい!」



どんなに風見姫さんと緋古那さんに強い思い出があろうと、私は徳川の人間だ。

この遊郭を作った将軍家の人間なのだから断るなどご法度。


そんな私らしくない力を使ってまでも、私は緋古那さんが欲しいのだ。



「知ってる?緋古那はあたししか抱かないの。どんな女が近づいてきたって、彼が夜を共にしたのはあたしだけなのよ」



とうとう女は、私にそんなことを言ってくる。


ずっと気にしていた、ずっと不安だった。

私の心が見破られてしまったかのように。


女として見てもらえないことが、女にとってどれほど苦しいことか。