「ふっ、んん…っ!……ッ、ん」



泣かないで。

泣かないで、寅威さん。


その涙は嬉し涙なの…?
それとも、悲し涙……?


私のことをまだ純粋すぎる子供だと思っていて、信じ込んでいて、夢物語のように幻想ばかりを抱いている憐れな女だと。

そんなことできるはずもないのにと、諦めている口づけだ。



「っ、……ばかなこと、言ってないでよ。俺に夢を与えて……どうするの」



私はそこまで綺麗でもないんです。


あなたに会うためならば、持っているものすべてを利用する。

金も権力も、あなたを手に入れるためならば。


残念ながら私は、そんな欲深い女なのです。




「────徳川 羽留」




私の凛とした言葉にピタリと止まって、唇は離れた。

動揺に開いているうつくしい瞳から、幾筋もの涙がツウッと、途切れを知らない想いとなって。