「俺は確かに縛られた生活をしてきたけど、食べるものも着るものもある。そこに関して不自由したことだけはなかった。……握り飯ひとつがこの子の命で、握り飯ひとつがこの子の今日なんだって、…ウル」
頬がさらりと撫でられる。
あなたの言葉はいつも私に幸福となって届いてくる。
野良犬が漁っていた残飯を同じように漁っていた私を、汚れた川の水を飲んでいた私を。
よく頑張ったねと、唯一認めてくれるのだ。
「…縁日に行ってみたいな」
切なそうな顔で、彼は笑う。
「花火が上がるんだろう?いつも音を聞くだけだったから。…見てみたい」
それは叶わない夢の先で、叶えてみたいこと。
小さな頃からずっと願っては、初めて言葉にしたんだろう。
「商店街を歩いて、もっと安くしてもらえないかって店主に値引きしてもらうんだ。海も見たい、…大きな海を」
大海屋───、
この見世の名は、あなたの夢。