「風見姫さんに身請けされて、あなたが地に足をつけて羽ばたけるなら……私はそれでいいんです」



羽が揃っていない蝶でも、籠から出られさえすればまずは歩くことから始められる。

そうしているうちに、もしかすると羽が生えてくるかもしれない。


気がついたときには飛べているような。


そんなものになってくれれば、あなたは笑うことができる。



「でも…、嘘では、ないですか」



どうしてまだここにいるんですか───と、指摘する。


あの女性はこの場所にいないあなたに価値はないと言い切った人だ。

あるとするなら美眉秀麗な顔だけだ、と。



「緋古那さんはどうしたいですか?」


「……ふっ、ひどいことを聞く」



飛べない蝶に「飛んでどこへ行きたい?」なんて聞いているようなものだ。

羽の切られてしまった蝶に、どんなふうに飛びたい?なんて。


あなたも本当はずっと期待していたのではないですか。