駆け出して、鷹の腕をつかむ。
店主には頭だけを下げて、私は逃げるように鷹の手を引っ張った。
「2度と来るんじゃねェ野蛮人ども!!さっさとこの町から出ていきやがれ……!!」
また当分は商店街に行けなくなっちゃった。
ほとぼりが冷めるまで、とは思ってはいるけれど、逆に今日のことが町中に広まってしまうはずで。
せっかく今の家にも馴染んできたのに…、またゼロから始めなくちゃならない。
こんなことは鷹と出会ったばかりの頃はしょっちゅうだった。
「オレ、どうにかしてでも金貯める。ひと月内には貯めるから……はやくこんな町出よう、ウル」
「…吉原だけは、ぜったいダメだよ」
「ああ、わかってる。……50両、ぜったい貯めてやる」
それ以外なんて、どうやって。
着物を買う50両も揃えられないのに、どうやって稼ごうっていうの。
薄い布団のなか、不安をぎゅっと消すようにお互いがお互いの胸に顔を埋めた───。