「…知るかよ……、知ったこっちゃねーよ、そんなこと……」


「……………」


「こいつは…孤児…、だったんだぞ」



鷹が立ち上がってまでも前に出た。

これだけは黙っていられないと、私の父親を責める気だ。



「こいつは…、こいつはなっ、野良犬のメシ食って、きたねえ泥水なんか飲んで…!!そうやって、そうやってたったひとりで生きてたんだよ……!」



着物だって死体から剥ぎ取ったものだ。
風呂なんか入れもしない。


冬だろうが夏だろうが、生活は何も変わってくれない。


川で身体を洗おうとして襲われかけたことだってある。

川縁で手を伸ばしながら力尽きる老人や子供を、この目でたくさん見てきた。



「なにが危険だっただよ、なにが守っただよ、忘れたことがなかっただあ?そんなモンあとからどうとでも言えんだよ!!!
じゃあこいつがたったひとりで泣いてたとき、あんた傍にいたのかよ!?父親として居てやったことはあったのかよ…!?」


「…………、」


「将軍家ならっ、地位も身分も持ってんなら……、大切な娘にどうにかしてでもさせんなよそんなことッッ!!!」



鷹が、泣いている。

私のために涙を流している。