「羽夏はおまえを手放してから数年後に病で亡くなった。そのあいだもずっと…、我が子である羽留の名を呼んでは泣いていた」


「ではどうして……、じじ様がいなくなったあと、なにもしてくれなかったのですか…?」


「……こちらでもいろいろあってな。最初の頃は文や金を送ってはいたが、実はそれも摘発されそうになって簡単には気にかけてやれなくなったのだ」



じじ様はそれも覚悟の上で私を引き取って育てあげてくれたのだと。

なにか少しでも危険を及ぼしそうになったら、この城との伝達も一切と途絶えることを。



「もう2度と、娘の顔を見ることはできないと思っていた。おまえの世話をしてくれていた家臣が亡くなったことでさえ……私はしばらく知ることができなかった」



じじ様が最後まで私に真実を話さなかったのは。

もしかすると私が自分から探して危険な目に遭わないよう、守るためだったのかな…。


この未来を見据えて、久兵衛さんが来てくれるのを待て、と。