こんなひと、なんだ……。


お殿様なのだから、想像していたものは堅苦しくて怖いといったものだった。

しかしすべてがひっくり返されたほど、天性の愛嬌のようなものがある人なのだと。



「ただ、私からすれば……」



そうして笑顔をスッと消した。

今度は慈しむような眼差し。


そんな二面性がある人だから、家来たちも敬うのではないか。


緊張してお茶を一口しか飲めなかった私に、お殿様は瞳をゆっくりと伸ばした。



「羽留は母親にとてもよく似ている。…なあ、久兵衛よ」


「…はい。羽夏(うか)姫さまを彷彿とさせる穏やかさと、可愛らしい気弱さに溢れております」


「む、気弱とはどういうことだ。羽夏は言うときはビシッと言える女だったのだぞ」


「もっ、もちろんにございます…!この久兵衛、褒めているのです!」


「ならよい」



そんな久兵衛さんとの掛け合いに、私はクスッと笑ってしまった。

すぐに何かを感じ取った鷹が「やべえ…!」と、こぼす。