荷物から取り出した着物は私の宝物。

さすがに旅装束のままで殿様に会うわけにはいかないと分かってはいるが、だからといってこんなにも上質な着物には慣れていない。


ほんとうの理由は、彼が近くにいてくれる気がして勇気が貰えそうだから。



「…かしこまりました。普段のお姿をお見せしたほうが、きっと慶勝様もお喜びになりましょう」


「……ありがとうございます…」



やさしく微笑み、私のワガママを受け入れてくれた。


なんとなく否定はしないのだろうと思った。

彼女たちは理由を聞き出すだけで、最終的には私の願いを聞き入れてくれる。


それが、姫という身分なのだと。



「ぷっ、ははははっ!」


「……ふふっ、鷹、それはないよ」


「おまえに言われたくねーって!」



再び顔を合わせた私たちは笑いあう。

お互いの姿を目に映して、笑いあった。