「ええい鬱陶しいっ!!何度も言ってるだろう!まずはここに50両きっかり揃えてこいって…!!」


「今は無理だが、必ず働いて返す…!!だからっ、」


「この着物はウチの顔なんだよ!お前みたいな貧乏人に譲っていいモンじゃねェんだ!!んなことしたらこの店の価値が下がるッ、とっとと帰りな!!」



その着物は、すこし前に鷹と一緒にこの商店街を歩いたとき。

たまたま目にして私が足を止めてしまった、淡い鴇色(ときいろ)をした絹素材の着物だった。



「……鷹…」



もう、いいんだよ。
私のためにしてくれてるのは伝わってる。


確かに誰にも言えない。

自分が今現在で身につけている着物は、死体から剥ぎ取ったものだなんて。


それが孤児にとっての当たり前で、普通だった。


だからこそ私にとっては今の生活をできていることが奇跡みたいなもの。