緋古那side




「ふふ、おかしい」


「…おかしい?」


「普通は格子から空を見上げるものだと思うのに、下を見つめているだなんて」



目覚めの悪い朝だ。

好きでもない女を抱き、気持ちがあるふりをするというのは苦痛でしかない。


自分は金で買われたのかと嫌になるほど実感するからだ。


そんな朝は決まって、あの子に会いたくなる。



「ねえ、まだ時間はあるでしょう?」


「……煙管、吸いたいのさ。風見姫も自分の身体、大切にして」



背中から回った女の細い腕はもう1度を求めていた。

俺は適当な理由をつけて、やんわり断る。



「翔藍、…ウルは泣いてた?」


「……はい」


「…そっか」



女を送り届けて、さっそく俺は振袖新造に昨夜のことを聞く。


あのあと俺がウルの前に現れなかったのはわざとだ。

顔を見てしまったなら俺のほうが駄目だと思ったから。