「彼に金をつぎ込むか、彼に愛される女になるか。たったのそれだけ」



両方だ。

りょうほう、私には難しすぎる。


客が選んでいるようで、実際は客が選ばれる立場。

それが吉原の真の姿なのかもしれない。



「果たしてあなたはどちらなのかしら?」


「……っ」



自分は両方手にしている、とでも言いたげな目を風見姫さんは送ってきた。


お金だった。
私は、お金だった。

思いつくかぎりお金で、彼から貰って、自分も今日は持っていると差し出して。


愛を取ったから、彼は私ではなく風見姫さんを選んだということ。



「あたしなら、緋古那を身請けすることだって容易いのよ」


「っ…!!」



あなたもお金じゃないですか、そんなの。

どうにも身請けというのは莫大な金額が動くぶん、真っ当な理由がない限り基本的に吉原側が断ることはできないという。