「…ウルが自分で稼いだの?」
「はいっ」
「……使えないよ、それは。どんなものよりも価値がある」
使うために持ってきたのに……。
私にとってはあなたとの時間が価値だ。
それを買うためならば、どんなにキツいことだってしてみせる。
無意識にも言葉に出ていたようで、緋古那さんはどういうわけか険しい顔立ちをした。
「…ウル、その考え方だけはダメ。金で買えないものこそが本物なんだ」
「…………、」
「風見姫は最初の頃から良くしてくれている俺の常連のひとりでね。彼女が大海屋を作ってくれたと言っても過言ではない」
恩がある、感謝がある、と。
私は大きな勘違いをしてしまっていたんだ。
緋古那さんは私のことだけを見てくれて、私だけが独り占めできる、なんて。
現に今、風見姫という女性のほうを選んだのは緋古那さんだというのに。