「よ、吉原は…、そういう場所でしょう…?」
どっぷり浸かってしまっているんだろう、私は。
騙されて引っ掛かりやすい性格だと鷹にはずっと言われていたし、気をつけなくちゃとは思っていた。
けれど、抜け出せそうにない。
この甘さからは、もう。
「どんどんやらしくなっていくな、この子…」
困ったように言いながらも、私の腰を撫でてくるあなたの手付きのほうがやらしい。
顎をくいっと掴まれる。
その漆黒だけはなにがなんでも見なくてはと、使命感のような気持ちで合わせた。
ゆっくりと近づいて……唇。
待ち望んだものが与えられようとした寸前だった。
「お楽しみのところ失礼いたします。緋古那殿、お呼び出しがかかりましたゆえ」
「………婆や」
それは緋古那さん専属の付添人である、おばあさん。
わずかな隙間を開けた襖から、こんなふうに呼び出しをされることは初めてだった。