「私はっ、緋古那さんが他の女性とそういうことをしていたら嫌で───、っ、緋古那さん……?」
「…俺だって本当は嫌だよ。けど、安心してるのも本当。ウルがひとりじゃないから」
そこは口づけをするところなんです。
髪を撫でてくれるのも嬉しいけれど、あなたなら私が欲しているものが見えているはずだというのに。
せめてもっと撫でて欲しいと、頬を寄せる。
「……最初から…そう言ってください」
「ごめん。ちょっと意地悪だったね」
キツネさん、きつねさん。
寅威さん、とらいさん。
緋古那さん、ひこなさん。
あなたにはいっぱい名前があるね。
「鷹くんはきみがこうして裏吉原に来ていることは知ってるの?」
「……はい。一応は」
「あら。知ってるんだ」
「…隠し事はしたくないので」
鷹がいなくなってしまったあとの生活を助けてくれた人なんだよ、って。
私も恩があるし、鷹がお姉さんに会えたのだって彼らのおかげでしょう?
なんて、少しだけ強気に言ってしまったことは秘密。