つまり水月さんの返答次第ですべての謎が解け、本当は誰がキツネさんなのかが分かってしまう。


でも、もう。
私はとっくに分かっていた。


あの夜、口づけを交わした瞬間に。



「───そうだ」



申し訳なさと、嬉しさと、たくさんたくさんごめんなさいと、ありがとう。

鷹みたいに駆け出して行っていいなら、そうしていた。



「…あの…、私にも大判とかって…」


「あるわけないだろう。おまえは緋古那から渡されているんじゃないのか」


「でも…、いつも緋古那さんは一夜を共にしないぶんのお金しかなんです」


「……共にしたいと?」



ボッと、顔が熱くなる。

ふっと笑った水月さんに照れなくなった。



「じゃあ…、前みたいにお化粧とかって…」


「…あれは俺からあいつへの誕生日の贈り物なだけだ」


「……………」



キツネさんだということを隠して、水月さんだと私に嘘を言いつづけていた理由。

それでも優しくしてくれた理由。


そんなものはわざわざ聞く必要なんかない。


ぜんぶぜんぶ、あなたにしかないやさしさで伝わっているから。



「…ずいぶんと女らしくなってきたな」



水月さんの言葉にはにかみながら、首を隠してくれるようになった髪を少しだけ触った───。