「っ……、」



まっすぐにいとおしいものを見る目だ、それは。

月よりもうつくしく、夜よりも儚く漆黒。


いつから。

いつからあなたは私のことをそんなふうに見ていたのですか。


─────…最初からだ。



「ん、っ、……ぁ、」



もっと激しくしていいとねだってしまうくらい、やさしすぎた。

壊れそうなものをすくうような口づけに、ぎゅっと緋古那さんの着物を握る。



「…しわになってしまうから、ね」



と言って、取られた手。


なにをするにも理由をつけて、そうでしか私に触れられないとでも言うのだろうか。


そんなことしなくていいの。

あなたが触れたいように、したいようにしてくれればいい。



「………今宵は十六夜みたいだ」



そうですね。

躊躇って躊躇ってせつなくなる、羽の欠けてしまった蝶が見えます。