汚れたら拭いてあげて、お金になんか絶対として換えない。

どんなに生活に困って家までもがなくなったとしても、トラちゃんとだけはずっと一緒にいる。



「あなたが生まれてきてくれたことを心から喜んでいる人間は、ここにいます」



どうか泣かないで。

あなたに泣かれると、私は悲しい。



「緋古那さん、お願いがひとつ……、あります」


「…お願い?」



あなたの誕生日だというのに。
もてなすのは、私の役目だというのに。

相変わらず貪欲でワガママな女だ。


渡された握り飯を遠慮することもしないで、貰えるものは貰おうと飛び付いていたあの頃とおなじ。



「口を…、吸ってはもらえませんか…」


「……………」


「…口づけを、して欲しいです」



これを水月さんに重ねている、なんて言われたなら私は怒る。

あの人にしてもらえなかったから代わりに言っているだなんて思われたとしたなら。