「では案内してもらおうかな。…床に」
会話を楽しむ、芸事を楽しむ。
………夜を、楽しむ。
それが吉原遊郭。
「といっても、せっかくの召し物を脱がせたくはないから」
「緋古那、さん…?」
「いっしょに横になるだけ。…怖いことはしないよ」
私から身体を布団に預けてしまったくらい、彼は本当に純粋な休息を求めているようだった。
もやりと、どうしてか胸に雲がかかる。
「やっぱり…、私なんかには似合っていませんか……」
「床についたからって色事をするとは限らない。遊び方は客それぞれだからね」
「…子供じゃないです、私はもう」
「可愛いよ、きみはすごく」
下手すぎる。
なんにも噛み合っていない。
素人が文句を言ってしまいたくなるほど、あなたの話術はこの機に及んで品質が下がった。
「…水月の代わりに求められることは、俺だってさすがにこたえる」
「ちっ、ちがう!」