生まれてきてくれたこと、私は感謝しています。
緋古那さん、私はあなたに出会って幸福を与えられたのです。
水月さんばかりを追いかけ、到底届きもしない月を掴もうとしていた私はあなたから見れば、とても間抜け者だったかもしれない。
都合のいい奴だと笑われたとしても、私は今日だけは精いっぱい、あなたが生まれてきてくれた日を祝いたい。
「─────、」
言葉を失っている、と思っていいのだろうか。
彼が待っている座敷へと上がった私を前にした、緋古那さんの表情は。
「う、ウルでございます。今宵はよろしくお願い致します…」
畳に手をつき、ぎこちなくも頭を下げる。
廓詞を使えたならもっと雰囲気は出たのだろうけれど、私はこれがいっぱいいっぱい。
ドキドキと速まる心臓を抑えながら、緋古那さんのそばへと移動する。