「ウル?」


「…わたし…、自分が嫌いです」


「俺は好き」


「こんな……、恥ずかしくてみっともなくて、甘えてばかりで、都合が良すぎる私が……大嫌い…」


「一生懸命で素直で、思っていたよりずっとずっと泣き虫だけれど、毎日を強く強く生き抜いてくれたきみが……俺は大好き」



変な言い方をするね、緋古那さん。

あなたとはこの裏吉原で会ったのが初めてだったはずなのに、昔の私を知っているかのような口ぶりだ。


泥まみれで、生きるためなら野良犬がほじくっていた残飯を奪うことすら躊躇わなかった私を。



「…ねえウル、今日は一緒に散歩しない?」


「お散歩、ですか…?」


「そう。と言っても、外には出られないから建物の中なんだけれど」



池があるらしい。
小さな橋もあるらしい。

表より裏側のほうが案外おもしろいのだと、私の涙をぬぐいながら彼は笑う。