俺は生まれてはいけなかった存在。
隠されなければならなかった存在。

周りにある権力だけが愛情だった。


どうしたって俺は、どんなに金をつぎ込まれようと、この檻からは出られないことが生まれ落ちた瞬間から決まっていたのだ。



「…いつか俺のお面を被ってもらうことになるかも」


「それだけは勘弁しろ。あんな薄ら寒い面、俺の趣味じゃない」


「…ふはっ。確かに水月には天狗のほうが似合いそうだもんね」



俺はきみに会えるだけでいい。

きみの笑った顔が見られるだけ、十分だ。


生きて生きて、生きていてくれてよかった。


だからウル、きみが着ている着物だって本当は俺のものなんだよ。

こいつじゃない。
水月ではない。


せせこましくて意地っ張りな十六夜というのだって実際は俺のこと。



本物のキツネさんは………俺─緋古那─だ。