短い髪に指を通し、白くなめらかな頬へと甲を滑らせる。

おまえには申し訳ないけれど、俺は惚れた女にこんなこともできてしまうんだ。



「その女は勘違いをしているぞ」


「…勘違い?どんな」


「俺に惚れてる」



それを勘違いにしてしまったら可哀想じゃないか。

おまえ、昔はまだ生意気ながらも素直さを残していたってのに。

それがなくなったらいよいよ最悪だ。



「…そりゃあ、おまえが“キツネさん”なんだから仕方ないんじゃないの」


「わざとそう仕向けているのは……緋古那、おまえだろう」



いとしい少女に落としていた視線を、ゆるりと上げた。

おまえがウルと結ばれることだけはない───そんなふうに、面と向かって誰かにハッキリと言われた気分だ。



「第一俺は、おまえから聞いた話をこの娘に聞かせたまでだ。…おまえは俺の名前を使って好き放題してくれているらしいが」



ああそうだよ。

水月を出しに使って、キツネさんに惹かれているウルを利用しているに過ぎない。