「しかしだ。あれは花魁道中をしてまでのことだったのかい、水月花魁殿」
「……………」
都合が悪くなって言いたくないことがあると沈黙を貫くところなんかも、ほら昔と同じだ。
俺が察せられる奴で良かったと思うよ、ほんとうに。
そうでなければこいつに友人なんてものは確実にいない。
「…あれも須磨ちゃんに知らしめるためだろう?“俺はここにいるぞ”って」
互いに会うことが許されはしなければ、監修も厳重ななかではああして存在を指し示すしかない。
大して客を買おうとしないのは俺もそうだけど、おまえもだろ水月。
そのためにきみは花魁になり、俺もきみを花魁にさせた。
実質、本来花魁になるべきは───俺だったのにね。
「そんなことを話したいだけだったのなら、俺は帰らせてもらう」
「待て待て、悪かったよ。…愛(う)い寝顔だろう?おまえにも見せてやりたかったんだ水月」
「…自慢か、嫌がらせか」
「んー、両方かな」