『寅威…、おれと話してると怒られるぞ』


『…怒られないよ。おれは、怒られない』



それからふたりの少年は、本格的にそれぞれの見世に移動させられた。

今まで兄弟のようにも育ってきた友と離れてしまうことに悲しんでいた八尋へと、寅威は言う。



手紙を送り合おう────と。



12歳、13歳と、彼らは本当に互いに文を送りつづけ、たまたまゆっくり顔を会わせることができた14歳のその日。

それぞれが成長という過程を通過している最中だった。



『久しぶり、八尋』


『…おまえも元気そうだな』


『きみも声変わり、したんだね』


『寅威も』


『おっと。俺より背が伸びているじゃないか』


『それは昔からだ』



いやいやいやと、人の良さそうで気さくな寅威の変わらなさに八尋はホッとした。

すると寅威は、とあるものを差し出してくる。