『八尋(やひろ)、また勝手に出ていくのは危ないよ。仕置き部屋に入れられたらどうするの』


『……ここから抜ければバレない。だから黙っててよ、寅威(とらい)』



同い歳のふたりは、7歳から共に生活していた。


1度入ったなら出られないと言われていた鳥籠のなか。

生まれたときからいた片方と、大人たちに連れられてきた片方。


この頃、12歳。


引込禿(ひっこみかぶろ)である少年たちはすでに、いずれはこの裏吉原の顔になるよう育てられているのだと分かっていた。



『脱走癖がついたら厄介だって、前にも番頭が言ってたんだ』


『……芸の稽古だって毎日毎日がんばってる。なのに息抜きもしちゃいけないなんて、おかしいだろ』



おまえはいいな。

簡単にそんなことができて───と、寅威は思った。