「……あっ」
ガゴンッ。
水を溜めた洗濯用のたらいを手から離してしまった。
昨夜は雨が降っていたため、泥混じりな水溜まりに落ちてしまった着物。
これではまた最初から洗い直しだ。
「……っ」
ごし、ごし。
最近ずっとずっと泣いているような気がする。
最後に笑ったのはいつだったかと、思い出すことさえしていない。
思い出さないようにしていることばかり考えてしまって、思い出すべきことを忘れてしまう。
そんな毎日だ。
「また………来てる…」
どうして来るの。
どうして、どうして、なんで。
あんなにひどいことをしておいて、どういうつもり。
玄関だとも立派には言えない小屋の入り口前、置かれている握り飯。
カラスに食べられてしまわぬよう、しっかりと笹にくるまれている。