それが彼なりの、私に対する合図だということ。

たまらなくなって少し前、昔のように飛び出して会いに行ってしまった。



「でも、ようできたおとぎ話でありんす。花ちゃんは最初、すごう勇ましい石くずでありんしたのに一番星になれちまうだなんて」


「…そうでありんすなあ」



ひとが変わったように廓詞を使い、化粧をし、芸に作法に身につけた。

あんなにも勇ましく生意気だった少女はもう、どこにもおりんせん。



「あ、須磨花魁。裏吉原のお方から手紙が来ておりんした」


「……あちきに?」


「ええ。こちらでござりんす」



字を見ただけで、適当な楼主の名前が裏面に書いてあることなど一目瞭然。

脳内に最愛の声を浮かべ、私は目に通した。


パサッ───、


落ちた手紙と、その上に染みをつくる涙。



「須磨花魁…?どうしたんでありんすか……?」


「っ、……っ、」



鷹は確実に生きている。

最近まで一緒に暮らしていた女が、裏吉原に通っている。


俺に任せてくれ───と。