雨風にやられてしまいそうな屋内で、水月は隣に腰かけながら言った。
『一緒にならないか。───花魁に』
『っ!』
私が花魁…?
こんな髪をしたやつだぞ。
廓詞(くるわことば)すら身に付けようとしないから、毎日のように怒られる。
花魁は、吉原の唯一。
簡単には床につかない、簡単には姿を現さない、簡単には買われない。
聞いただけで私たちの希望だ。
『そうすれば、たとえあの場所で生きていたとしても……俺は須磨だけをずっと愛すことができる』
『っ……、』
そっと身体が倒されて、着物の帯が水月の手によってほどかれていった。
初めて交わした口づけも、包擁も、涙と熱と困惑でおかしくなりそうだった。
これだと水揚げの際、生娘のふりをしなくてはならなくなってしまう。
そう言った私に薄暗闇のなか、水月はいとおしそうに微笑み、小さく震える全身に唇を這わせてきた。