『…俺も行く』
『え…』
『俺も、須磨と一緒に行く』
この手があれば、本気で生きていけると思った。
どんなに無謀だと言われようと、その先に光などなくとも、私の隣に水月さえいれば───と。
そして弟である鷹とまた、笑いあいたい。
しかし、私は時間を空けすぎたのだ。
たどり着いた家は草木が邪魔をするほどの廃屋となっており、誰も住んでいなかった。
『入らんほうがいいぞ。そこに住んでいた家族は数年前に……一家心中を起こしたらしいからな』
離れていた家族との絆よりも、通りすぎた男の言葉のほうが信憑性が高いなど。
『一家……、心中…?』
『ああ、可哀想になあ…』
耳が痛い。
デタラメを言うなと、叫びたかった。
絶望を感じていた私に、微かな希望にも満たない何かが、ひとつだけ。
『ただ小さな男の子だけはひとり、助かったとかなんとか』
『っ…!!鷹はっ、鷹は今どこにいるんですか……!!』
『さあ…。どこにおるかは分からん』