月に何回かだけ、私がそのとき身を寄せていた場所に握り飯を置いていってくれる人がいた。


今日こそは今日こそはとお礼を言おうと思ったときほど来てくれなくて、クタクタで疲れて泥のように眠ってしまった日に限って現れる。


握り飯ひとつ。

それが、唯一の共通点。



「そいつ、だれ?」


「…わからない。もう、ずっとずっと来なくなっちゃったから」


「……へえー」



鷹と出会ってからだ。

そこから彼は、私のところへは来てくれなくなった。


だからたまに考えてしまう。


もし私が今でも鷹と出会わずにひとりで生きていたのなら、今でも握り飯を届けに来てくれていたのかなって。



「鷹?まだ拗ねてるの?」


「…………」


「……じゃあ私、そっちで寝るね」


「はっ?いやっ、なんでだって!」



薄い布団が1枚。

12歳の頃は楽しい就寝時間だったけれど、今はどこかぎこちなくて狭い。


背中を向けていた鷹は、勢いよく振り返ってまで止めてくる。