「水月はもう少ししたら来るよ。それまでゆっくりしていよう」



2階の座敷に上がって、まずは芸事を楽しむ。


それが吉原の正しい遊び方。


いきなり上級の郎子を指名することはできないので、引手茶屋というものを通す。

そこで芸を披露してくれる芸者たちの食事代などもすべて客持ちだ。


それさえ大金が動くというのに、郎子と一夜を共にするだなんて、どれほど稀な夢なことか。



「……会いたくないです…、水月さんには、会いたくない」


「…だったらどうして来たの?」


「……………」



甘えられる、この人には。

慣れと言ってしまうのはおこがましいが、私がワガママをさらけ出してしまえるよう引き寄せてくれる緋古那さんだからこそだった。


やさしい声と、あまい香り。


自分はまだ子供だな……と、彼の前では恥ずかしさも消える。