くっつかなくてもいい?
 そういえば明志くんやゆずくんは平気で私に抱きついたりくっついたりしてくるけど、蒼依くんはべったりくっついてくることってないかも。
 もしかしてくっつかれるの嫌だった……?

「ごめんね」

 これからは気をつけよう、とシュンとすると、蒼依くんが「あ、いや、」と慌て始める。

「謝んなくていい。苺花のことが嫌なわけじゃねぇから。これは俺の問題っつーか……」
「?」
「あー、とにかくそばにいてくれたらいいから。行くぞ」
「うん!」

 まだ顔の赤い蒼依くんのことが気になるけど、今は目の前のことに集中しないと。
 私たちは途中すれ違う龍乱會のメンバーとテキトーに挨拶を交わしながら、前回私が縄で縛られた一番広い工場の中へと歩みを進めた。
 手前に、錆びついた機械の隙間から通れる細い道を見つけた。
 草の生い茂り方からして通り道としては使われてなさそうだ。
 その道の途中には工場の中を見渡せる小さな窓があって、そこからこっそり中の様子を見られそうだ。
 蒼依くんと二人、そこにしゃがんで息を潜める。