ゆずくんの悲しそうな声に胸が痛んだけど、かたくなに窓の外を眺めた。
 そんな私の肩に、うしろからゆずくんが自分のおでこをポスッとのせる。
 ゆずくんのやわらかい髪が首にあたった。

「苺花。お願い。元気出してよ」
「……」
「俺たちがいるじゃん」

 ゆずくんの泣きそうな声に、つられて泣きそうになる。
 でも返事はできない。
 私は、ゆずくんが大好きだ。
 明志くんも、蒼依くんも。ルリやモモ、ERRORsのみんなのことも大好き。
 みんなかけがえのない、大事な人。
 ……だけど、翠くんの代わりになんてならない。

「ごめん、ゆずくん……今は一人になりたい気分かも」

 しばらく黙っていたゆずくんはそっか、とひどく切ない声を絞り出して私から体を離すと、部屋から出て行った。
 罪悪感で胃がキリキリと痛くなった。
 ゆずくんに八つ当たりしたって仕方ないのに。
 
 私がどれだけ落ち込んでても、明志くんは翠くんに会いに行くことを許してくれなかった。
 一人で外に行こうとすると必ず誰かつけさせられ、常に監視されている。夜も勝手に外出できないよう、遅くまでリビングに必ず誰かがいる徹底ぶり。
 無意識にため息が漏れた。

――苺花がどこにいたって 必ず迎えに来るから

 不意に翠くんのセリフを思い出して、胸が締め付けられた。
 ……翠くん。いつ迎えに来てくれるの?