夏休みが、終わろうとしている。
私は冷房の効いた部屋のベッドで窓に頭をもたれさせ、セミたちが懸命に鳴くのをぼんやりと聞いていた。
あの夜、この窓から見えた翠くんの困ったような笑顔を何度も何度も思い出しては、切ない気持ちが込み上げる。
あのとき、私が翠くんの元に行かなければ。
翠くんを引き留めなければ。
翠くんは殴られることも、こうして離れ離れになることもなかったのかも。
……ううん、遅かれ早かれ、こうなっていたのかもしれない。
この夏、お兄ちゃんたちやERRORsのみんなに色んな所へ連れてってもらった。
キャンプ、海に花火大会……これ以上ないほど夏らしいイベントにたくさん連れてってもらったけど、私はどれも楽しむことができずに、色のない世界にいるような感覚に陥っていた。
コンコン、と部屋のドアがノックされた。
「苺花ー」
……ゆずくんの声だ。
「……」
「入るよー」
「……」
ゆずくんがドアを開けて入ってきたけど、私は構わず窓の外を眺め続ける。
「ほら、今日は苺花の大好きなケーキ買ってきたよ!一緒に食べよう」
ゆずくんが私の横に座って、ケーキ屋さんの袋を開ける。
「いい。ゆずくん食べていいよ」
「苺花……」