言われて思い起こされるルリの表情は、確かに怖い目にあった人のそれだった。……でも。

「……翠くんはそんな人じゃない。翠くんはいつも誠実でまっすぐで、優しい人なの!ルリのことも何かの間違いなんだよ!お願い、みんな。龍乱會とちゃんと話し合って、事実を確かめて!」
「いい加減にしな、苺花」

 蒼依くんに強い口調で叱られるのは初めてだったから、びっくりして声が出せなくなる。

「わかってる?今のERRORsと龍乱會の状況。苺花の行動ひとつで、明志が大事に守ってきたチームがなくなることだってありうるんだよ」
「……っ」
 
 明志くんが、蒼依くんがゆずくんが、ERRORsを守るためにどれだけ頑張って来たか……私は知ってる。
 
「でも……でも、」
「あいつだけはだめだ」

 明志くんが曇りない目で言った。

「俺は母さんと約束したんだ。何があっても苺花を守るって……!」

 絶対に曲げられそうにない強い意志を、明志くんから感じた。

「わかってくれ、苺花」
「……」

 それ以上なす術もなく、その場に崩れ落ちた。
 
 そして、翠くんのいない夏が始まった。