ドキドキして、でも安心する。
 ずっとこうしていたい。
 このまま時間が止まっちゃえばいいのに。
 生ぬるい夜風が吹いた。
 もうすぐ夏が来る。
 このままじゃデートも難しいんだろうなって思ったら泣きそうになった。
 しばらくして翠くんが体を少し離して、私の目をまっすぐに見た。

「苺花。何があっても僕は絶対苺花を離さない。だから待ってて。全部ちゃんとして、迎えに来るから。苺花がどこにいたって、必ず迎えに行く」

 翠くん。
 どうしていつも、欲しい言葉をくれるの?
 もう大好きなんて言葉じゃ足りないぐらいだよ。

「うん……っ」

 翠くんが例の笑顔で頷いてくれる。

「そろそろ行くよ。お兄さんたちに気付かれたら大変だし」

 翠くんは私から手を離して一歩離れた。
 それが無性に寂しくて、思わず手を掴む。

「翠くん、最後にもう一回ギュッてしたい」
「……うん」

 翠くんが私のわがままにこたえて、再びギュッと強く抱きしめてくれた。



「――苺花?」