「あのとき私……『大人しくしろ』って、ナイフで脅されて……っ」

 ルリは途切れ途切れになりながら、懸命に話す。

「でも、そのあとすぐパトカーのサイレンがして、かろうじて助かりました。怖かったし、モモに言いたかったけど……もし元カレといたって言ったらモモがどう思うかわかんなくて、それも怖くて……それにあの人、異常だったから」

 恐怖からかガタガタと震え出すルリは、とても嘘を言ってるようには見えない。

「こんな告げ口したら、本当に殺されちゃうかもって、ずっと言えなくて……っ」

 ポロポロと涙を流すルリを、モモは「もういいよ」ってギュッと抱きしめた。
 そして改めて明志くんに目を向ける。

「総長……!いま龍乱會との状況がやばいのはわかってます!でもオレ、ルリをこんな風にした羽根村を許せないっすよ!!やつをぶん殴って地獄に落としてやるぐらいしないと気が済みません!!」

 モモの涙ながらの訴えに明志くんたちが唸った。

 ――羽根村翠がナイフで女の子を襲った

 そんな信じられないことがいま、みんなに事実として受け入れられようとしている。

「っ、そんなわけない!!」

 いてもたってもいられなくて、そう叫んでいた。

「苺花……?」

 みんなの驚いた目がむけられてることに気づいて、後ずさる。

「あ……ごめん、ちょっとトイレ」