「モモ。俺はお前が意味もなくバカなことするやつだとは思っていない。事情を話してくれ」

 明志くんが優しく言うと、モモは意を決したように顔をあげ、話し始めた。

「一年前、ルリが傷つけられてたんすよ……!龍乱會の総長に!!」

 え!と声をあげそうになった。
 傷つけられた?ルリが、翠くんに……!?

 はっと隣を見ると、ルリが泣きそうな顔で俯いている。

「本当か、ルリ」

 明志くんに聞かれたルリは私の腕にくっついて、うつむいたままコクリと頷いた。

「羽根村がJesusを潰した日、ルリもJesusのアジトにいたらしいんです」
「どうしてそこにルリが?」

 ルリはなにかに耐えるように私の腕をギュッと掴んだ。

「そのときモモと付き合い出した直後だったんですけど……Jesusに元カレがいて、まだしつこく連絡が来てて……ちゃんと元カレのこと終わらせなきゃって、Jesusのアジトに会いに行ったんです。そしたら……Jesusが襲撃されてて、元カレのあとに私も……っ」

 声を詰まらせるルリの元へ、モモが駆け寄る。

「ルリ……!」

 ひしっとルリを抱きしめたモモは、ルリの首に巻きついた黒革のチョーカーに触った。

「……これ、見せてもいいか?」

 ルリはコク、と頷いてチョーカーを外す。
 そこには、切り付けられたような傷痕が残っていた。

「……!」