桃瀬(ももせ)裕也(ゆうや)、中学二年生。
 藤堂三兄弟に憧れてERRORsに入った男の子。
 みんなに〝モモ〟と呼ばれる彼は、明志くんに負けず劣らずの熱血漢。
 忠誠心はERRORsいちで、明志くんたちが言うことに歯向かったことは一度もない。
 素直で、まっすぐで、情に厚いモモのことをみんな信頼している。
 そんなモモが、いま絶対手を出すなと言われてる龍乱會に、それもたった一人で乗り込みに行くなんて――


「どういうことだ。モモ」

 昼休み、ERRORsの緊急集会が執り行われた。
 いつもの幹部席に座る明志くんたちの前には、龍乱會に返り討ちにされたらしく身体中キズだらけでボロボロな姿の、モモ。 部屋の後ろで壁に背をつけて立つ私の隣には、怯えた様子で縮こまるモモの彼女・ルリがいる。
 いつも元気で明るい派手ギャル・ルリのこんな姿はなかなか見ないから、只事じゃないことがわかる。

「いま龍乱會とは緊張した関係にあるってわかってるよな。落ち着くまで、絶対に手出しするなと言っていたはずだ」

 顔に傷をたくさんつけたモモは悔しそうに歯を食いしばるだけで、何も言おうとしない。

「ここにいるメンバーの前じゃ言えないのか」
「……」

 モモは黙ったまま。
 見かねた明志くんは立ち上がって、ERRORsのメンバーたちに目線を移した。

「モモ以外のメンバーは出ろ。対応を決めたらまたあとで招集する」
「「「はい!」」」
「あー、ルリと苺花はいてくれ」

 メンバーが全員出て行って、中にはお兄ちゃんたちとモモ、私とルリだけになる。