よかった……見つかったらきっと大変なことになってた。
 ホッと胸をなでおろして教卓の下から出ようとしたその時、グッと手首を掴まれ引き戻された。

「キャッ!?」

 その勢いで、翠くんの膝の間に座り込んでしまう。

「へ?す、翠くん!?」
「しー……」

 また人差し指をたてて、私と目を合わせて意地悪く微笑む翠くん。
 その穏やかな優しい目でただ黙って見つめられるだけで、心拍数が上がっていって、動けなくなる。
 やばい。
 私の顔、たぶん真っ赤で、凄いことになってる。

「苺花」

 甘い声で私を呼んだ翠くんは、そっと私の頬に手を添えて囁いた。
 
「……今からすることは、お兄さんたちにはぜったいナイショだよ」
「え……?」
「目、閉じて」

 翠くんが少し顔を傾けて、距離を近づける。
 ドキドキが最高潮に達するのを感じながら、目を閉じた。

「っ……」

 柔らかい唇の感触に、心臓が破裂しちゃうかと思った。
 翠くんとのキスは、すっごくドキドキして、すっごく幸せで。
 夢だって言われた方がまだ納得がいくぐらい、夢みたいな瞬間だった。