トコトコと歩く足音は、窓際の席へと向かう。

「「……」」

 翠くんと私は、教卓の下で身を寄せ合い息を潜めていた。
 狭いから仕方ないけど、身を縮こめる私の体を翠くんが抱きしめるような形で、翠くんの胸にちょうど私の耳が当たって、翠くんの心臓の音が聞こえてくる。
 ドクドクと鳴ってる心臓は全然穏やかじゃなくて、呼応するように私の心音も早くなる。

「す、翠、く」

 キャパオーバーして、思わず声を出す私に翠くんが「し」と人差し指をたてたので、私はハッと口を塞いだ。
 その仕草すらかっこよくて、訳が分からなくなる。

「あーあったあった」
「もーしっかり~」
「あはは」

 女の子たちは私たちに気付くことなく、楽しそうに話しながら教室を後にした。