「ん?」

 口元を両手で押さえてときめきに耐えていると、翠くんが不思議そうに首を傾げた。その姿さえ可愛い、かっこいい、通り越してもはやキレイ。
 久しぶりに会えただけでも感激なのに、こんなギャップある姿が見れるなんて……!

 そのとき、ポケットのスマホが着信を知らせた。
 
「あ、明志くんからだ……!」

 きっと戻ってこない私を心配してるんだろう。
 翠くんに目くばせすると頷いてくれたので、通話ボタンを押した。

「も……もしもし、明志くん?」
《おう苺花。どうした?大丈夫か?》
「えっと……そう、ちょっと途中で会った先生に頼まれごとしちゃって……!まだかかりそうだから、終わったら連絡するよ!」
《そうか、わかった。じゃあ連絡待ってる》
「うんっ!」

 電話を切って、ふぅ、と安堵の息をついた。
 嘘ついちゃって申し訳ないけど、ひとまずごまかせてよかった……。

「苺花」

 翠くんが、おもむろに私の手を取った。
 私の手をすっぽり包み込んでしまう男の子らしい手にドキッとする。
 顔をあげると、甘い視線がまっすぐに私に向けられていた。

「会いたかった」

 きゅぅ、と胸が締め付けられて、苦しくなる。

 ……明志くん。
 ごめんなさい。
 ちょっとだけ。
 ちょっとだけだから。

「私も、会いたかった……っ」

 泣きそうになりながらギュッと手を握り返す私を、翠くんは暖かい笑顔で包み込んでくれた。