うぅ……この笑顔、好きすぎる……っ
 悶絶していると、私たちが背にしている校舎の廊下を誰かが通って、私はビクッと体を跳ねさせた。

「おーい。部活ないやつはもう帰れよー」

 奥の教室の方に向かって投げられた声は、どうやら先生。その足音が遠ざかるのを確認して、ホッと息をついた。

「そんな怯えなくても大丈夫じゃない?制服着てるし」

 ほら、と手を広げてみせる翠くんの姿を、改めて見てみる。

 新合(しんごう)中の制服であるブルーのYシャツに、青ストライプのネクタイ、チェック柄のズボン。
 いつもは進学校の富香中の高級感漂う制服をきっちり着てる翠くんだけど、校則のゆるい新合中の生徒にならってか、ネクタイを緩めてシャツの上のボタンも外し、オシャレに着崩している。
 いつもの優等生な雰囲気の翠くんもいいけど、ちょっとチャラい感じの翠くんも……いいっ!かっこいい!
 こんなかっこいい人が学校まで会いにきてくれるなんて、夢みたい……!