そのとき、ちょうどテニス部の子たちが近くを通った。翠くんを見てひそひそと話している。

「あんなイケメン、うちの学校にいたっけ?」
「制服着てるからそうなんじゃない?でも初めて見たかも……」

 そんな声が聞こえて、ドキッとする。
 やばい!

「とっ、とりあえずこっち……!」

 私は翠くんの手を引っ張って、人気のない校舎の裏庭に連れ出した。
 草木が生える茂みの影に翠くんと一緒にしゃがむ。

「どうしたの翠くん、その恰好……!」
「親切な人に交換してもらった」

 どゆこと?

「……ごめん、やっぱり迷惑だったかな」
「あっ、ううん、嬉しいよ!」
「ほんと?よかった」

 翠くんは安心したのか、フワッと笑みをこぼした。

「っ……、」

 ニコニコ笑う翠くんはとっても無邪気でかわいくて、私は考える力を奪われてしまう。