【お疲れ。学校終わった?】

 こんななんでもないメッセージなのに嬉しい気持ちでいっぱいになって、つい口角が上がる。

 【終わったよ。明志くんたちの集会を待つ間、空き教室でちょっとだけ勉強しようと思う!】

 返事をしてすぐ、既読マークがついた。
 翠くんから来るだろう返事を心待ちにしながら、再び歩き出す。
 メッセージくれたってことは、翠くんも学校終わったところなのかな。
 翠くんの制服姿を最後に見たのはいつだったかな。
 渡り廊下を行く途中、目に入ったのは冴えわたる青空。
 その中を飛ぶ飛行機が、透き通る青に白いひこうき雲を吐き出しているのが見えた。
 ふと、記憶の中の翠くんが言った。

 『知ってる? ひこうき雲でその後の天気がわかるんだって』

 ひこうき雲がすぐ消える時は晴れが続く、なかなか消えないときは二~三日後に天気が崩れるんだって翠くんは教えてくれた。
 ちょうど分厚く消えない飛行機雲が見えて、私は『残念だな』って言った。
 そしたら翠くんは微笑んで、『俺は楽しみだよ。傘忘れたって言い訳して、苺花と相合傘できる』って言ってくれて……。
 嬉しかったけど恥ずかしくて、それ私本人に言っちゃダメなんじゃないって言ったら翠くんは『わざとだよ』って笑ってた。

 今日の飛行機雲は、空に残ることなくすぐ消えてしまった。
 ハァ……と重たいため息が漏れた。
 翠くん。
 会いたいよ。
 やっぱりメッセージのやり取りだけじゃ足りないよ……。

「苺花」