「あの、ちょっとだけスマホ返してくれませんか?お兄ちゃんに連絡したいんです!」

 ちょっと友達と遊んでから帰るよって言っておけばお兄ちゃんたちも心配しないはず!

「は!?助けを呼ぼうってのか!?駄目に決まってんだろ!」

 顔を真っ赤にして怒られた。

「あっ、そっか~」

 このタイミングで連絡すれば助けを呼べちゃうもんね。
 うっかりしてた自分にあは、とつい笑ってしまった。

「っ……!」

 不良さんがなぜか顔を赤くして取り乱した。

「なっ、なにヘラヘラしてんだお前!舐めてんのか!?ああ!?」
「いっいいえ!滅相もありません……!」

 私は慌てて口元をキュッと結んで顎に力を入れる。 わざとじゃないんだけど、舐めた態度をとってるように見られてしまったみたいだ。
 うーん、人質って難しい。

「……おい、縄キツイんだろ。ちょっと緩めてやるよ」
「えっ!?いいんですか!?」
「おう」

 不良さんが照れくさそうに頬をポリポリかいた。
 なんで急に優しくなったんだろう? 痛かったから助かったぁ。

「ありがとうございますっ!」

 嬉しくてニコニコしてしまうと、不良さんが顔を赤らめて目を逸らした。